拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1) 価格: 945円 レビュー評価:4.5 レビュー数:2 初めて読む作家の短編集。たまたま手にとってちょこっと読んだら止まらなくなってしまった。
ベトナム戦争従軍の経験はないらしいが、ベトナム戦争を題材にした表題作はそのすさまじい戦場の描写がスゴい。
ボクシングとセックスとてんかん、死といったテーマを描いた暴力的な小説だが、ニーチェやショーペンハウエルといった哲学者の言葉も散りばめられていたりする不思議に知性を感じさせる小説だ。
ほかの作品も読んでみたいが、まとまった翻訳はこれ一冊のようだ。
とりあえず、私の中では今年度ベストの翻訳短編集。 |
中国行きのスロウ・ボート (中公文庫) 価格: 600円 レビュー評価:4.5 レビュー数:24 著者初の短編集。どれもレベルが高くて面白い。あえて挙げるなら「午後の最後の芝生」かな。長編「羊をめぐる冒険」とつながる「シドニーのグリーン・ストリート」も他のものとは毛色が違うが面白い。「ニューヨーク炭鉱の悲劇」はタイトルと本文とのつながりは一体何かと考えてしまう。 |
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物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21) 価格: 740円 レビュー評価:4.0 レビュー数:8 本書を読むと物語作りの裏側を知ってしまい、折角面白く読んでいた本がつまらないもの思えてしまうのではないかと心配になる方は、少なからずいらっしゃると思います。その意味で本書はパンドラの箱とも言えるものでしょう。小説の基本構造を知ることは、物語を作る設計図によって物語づくりを一般化する役目と、読み手のレベルを上げる役割があります。特に後者につきましては、ただ設計図をなぞった駄作を選別するのに役立ちます。読者の目が厳しくなればそれだけ供給側もレベルアップせざるを得ず、無駄な出版物が減るというものです。
しかしながら本書を読むにあったっては、それなりの読書量と清濁併せ呑 |
ティファニーで朝食を (新潮文庫) 価格: 580円 レビュー評価:4.0 レビュー数:8 映画ではヒロインのホリーはオードリー・ヘップバーンが演じているが、
これは原作に出てくるホリーとは別物と考えていいだろう。
明らかに印象が違う。
と同時に、今再び映画化されるとしたら誰ならホリーを演じることができるだろうかと考えてしまう。
翻訳者の村上春樹は解説において、カポーティの文体を絶賛していたが、
今度は原文で読んだみたいと思った。 |
キャッチャー・イン・ザ・ライ 価格: 1,680円 レビュー評価: 4.0 レビュー数:228 1951年に『ライ麦畑でつかまえて』で登場してからというもの、ホールデン・コールフィールドは「反抗的な若者」の代名詞となってきた。ホールデン少年の物語は、彼が16歳のときにプレップ・スクールを放校された直後の生活を描き出したものだが、そのスラングに満ちた語り口は今日でも鋭い切れ味をもっており、ゆえにこの小説が今なお禁書リストに名を連ねることにもつながっている。物語は次の一節で語りだされる。 ――もし君が本当に僕の話を聞きたいんだったら、おそらく君が最初に知りたいのは、僕がどこで生まれただとか、しみったれた幼年時代がどんなものだったかとか、僕が生まれる前に両親はどんな仕事をしていたかなんて |
村上春樹にご用心 価格: 1,680円 レビュー評価:4.0 レビュー数:20 村上春樹の学術的書評、としては読まない方がよいのかもしれません。
ブログやこれまでの文章を元に再構成をされたものたと思いますし、
あくまで、内田樹のエッセイのひとつととらえた方がよいでしょう。
「平易な言葉で新たな視点を提供してくれる」というのが、
内田樹の著作の、わたしにとっての醍醐味です。
本書も例にもれず
「村上春樹」というピンポイントのテーマをもとに、
「村上春樹という人・著作」に限らず、現実の様々なことを考えさせてくれる良著です。
これまで村上春 |
本当の戦争の話をしよう (文春文庫) 価格: 680円 レビュー評価: 4.5 レビュー数:18 「彼らはいつ死ぬかもしれぬ男たちが背負うべき感情的な重荷を抱えて歩いていた。悲しみ、恐怖、愛、憧れ、それらは漠として実体のないものだった。しかしそういう触知しがたいものはそれ事態の質量と比重を有していた。それらは触知できる重荷を持っていた。彼らは恥に満ちた記憶を抱えて歩いていた。彼らは辛うじて制御された臆病さの秘密を共有していた。(中略)人々は殺し、そして殺された。そうしないことにはきまりが悪かったからだ」。(村上春樹訳、文春文庫) 1999年、ピューリッツァー賞、米国書評家協会賞という2つの賞の最終審査に残った『The Things They Carried』(邦題『本当の戦争 |
ランゲルハンス島の午後 (新潮文庫) 価格: 620円 レビュー評価:4.5 レビュー数:8 1984-86年(村上氏35-37歳)に雑誌「クラッシィ」に掲載された25のエッセイ。
特に気付きを与えてくれるというのでもなく、村上春樹的なユニークな視点で捉えた事象が淡々とまったり&ゆるりとしたかわいらしい安西水丸さんの絵の伴奏付きで描かれてます。
「ゆるい時間を過ごしたいなぁ」なんて時にはお薦めできると思います。でも、自分がこの先果していつ読み返す時が来るのか、、、 |
風の歌を聴け―Hear the wind sing 【講談社英語文庫】 価格: 714円 レビュー評価:5.0 レビュー数:8 ご存知、村上春樹さんのデビュー作です!
まずはクオリティーの高さにビックリ!
最初からこんなに書けたんだ?、すごい!と感じました!
これを読んだら作家をめざす人のほとんどが尻込みしてしまいそう!
英語のほうですが、村上作品のメジャーなものは英訳されているのですが、、
いつも思うのは翻訳者の質の高さです!
他の作家だと、原作と翻訳が「別の本」のようなものが多い中で、
村上さんの翻訳者はレベルが高いのか原作世界とのずれが少ないのです!
むしろ翻訳のほうが村上さんの世界が、わかりやすいかも?と思う |
辺境・近境 (新潮文庫) 価格: 500円 レビュー評価:4.5 レビュー数:25 著者はノモンハンの草原で戦争の残骸を目にし、雌狼が追いつめられて射殺されるという場面に遭遇します。
そのあと、ホテルで部屋全体が大地震のように激しく揺れるという体験をします。
そして、その振動や闇は外部からやってきたものではなくもともと自分の中にあったものが何かのきっかけでこじ開けられたのだと書いています。
旅の非日常性の中で私たちが究極的に求めるものは、それを意識するしないにかかわらず、もともと自分の中にあったものがこじ開けられるという体験ではないかと思います。よくいう「自分探し」というやつですね。
なにも世界の辺境まで行かなくても、四国で |
ノルウェイの森〈下〉 価格: 1,365円 レビュー評価:4.0 レビュー数:39 この作品には、心療病棟、自殺、失踪とういくらでも暗く深刻にすることができる要素があふれているのだが、読後は重々しさがなく、喪失の切なさのみが残った。結局、主人公の周りの自殺していった人々、その死に直面した時の苦しみも、振り返れば「過去」でしかない、そして過去の記憶は望もうと望まないと誰もが喪失していくということだと思う。 青春のはかなさや切なさを描いた傑作である。 また、派手な仕掛けはないのに、この作品の舞台の1970年前後の熱さとけだるさが混沌としている雰囲気を読者に感じさせることに、村上氏の技巧の高さがある。 |